科学用語の解説

あ行

  • RNA

    リボ核酸(ribonucleic acid)の略称。DNAの情報をもとにアミノ酸を結合させてタンパク質を合成する役割や、遺伝子発現制御機能を持つ。近年では、タンパク質を合成しない「ノンコーディングRNA」がさまざまな役割を果たしていることが分かってきています。

  • RNA干渉

    二本鎖RNAと相補的な配列を持つmRNA(メッセンジャーRNA)が特異的に分解される現象。元々、遺伝子発現の抑制機構の一つとして発見されましたが、近年では人工的な二本鎖RNAを使って、遺伝子の発現を阻害する技術が開発され、医学・生物学などにおいて、生命現象や疾患にかかわる遺伝子を解析するために利用されています。また、特定の遺伝子発現のみを効果的に抑制することから、疾患にかかわる遺伝子の機能を抑制する治療薬への応用も期待されています。

  • iPS細胞

    人工多能性幹細胞(iPS細胞:induced pluripotent stem cell)のこと。一度分化した体細胞は分化前に遡れませんが、iPS細胞は体細胞に特定因子(初期化因子)を導入して初期化することで樹立されます。自分自身の細胞からつくられたiPS細胞を分化させて得られる組織は、移植時の拒絶反応が起こらないので再生医療への応用が期待されています。

  • アデニン

    生体内に存在する塩基性の化学物質でプリン塩基のひとつ。DNAを構成する4つのヌクレオチドの塩基のうちのひとつ。核酸の構成成分。

  • アポトーシス

    体をよりよい状態に保つために予めプログラムされた細胞死。細胞や遺伝子は日々傷付き修復されていますが、損傷がひどく修復不能であったり修復が不完全だったりすると異常細胞が生じます。そこで細胞には異常細胞の増殖を止めるために、自らを自殺させることがあります。

  • アミノ酸

    タンパク質を構成する最小の成分。地球上のあらゆる生命はアミノ酸が構成するタンパク質からできています。私たち人間の身体をつくっているアミノ酸は約20種類で、そのうち体内で合成できるアミノ酸は11種類あり、これらを非必須アミノ酸といいます。残りの9種類は体内で合成できないため、食事などで補う必要があります。この体内で合成できないアミノ酸を必須アミノ酸といいます。

  • アルギニン

    タンパク質を構成するアミノ酸の一種で、塩基性アミノ酸。成人においては体内で十分量が合成されますが、幼児は体内での合成が不十分であり、成長を維持するためには食事から積極的に摂取する必要があります。その意味で、幼児期においては必須アミノ酸のひとつにあげられています。

  • アレルギー

    人間の体は異物(抗原)が侵入すると、その抗原に対抗する抗体を作って異物を排除しようとします。これが「免疫」という仕組みです。免疫は外界から体を守るために必要不可欠な反応ですが、過剰に働いて体に不都合な様々な症状を引き起こすことがあります。これを「アレルギー」といいます。また、アレルギーを起こす抗原のことをアレルゲンといいます。アレルギーが原因で起こる病気には、気管支ぜん息のほか、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症などがあります。

  • ES細胞

    胚性幹細胞(ES細胞:embryonic stem cell)のこと。受精卵の発生初期(胚盤胞期)段階から取り出した細胞で、あらゆる組織の細胞に分化することができる多能性幹細胞です。

  • 一重項酸素

    活性酸素の一種。紫外線にあたったときに皮下組織で発生するもので、反応性は高いといわれています。

  • 遺伝

    生物が持っている性質や形質が、世代を通して子孫へと受け継がれていくこと。

  • 遺伝子

    DNAの中に点在する、タンパク質の一次構造(アミノ酸配列)や、非翻訳RNAの構造(塩基配列)を決定する情報を持っている部分を「遺伝子」といいます。体質に違いが生じるのはこの遺伝子のDNA配列がヒトによって少しずつ異なるためです。

  • 遺伝子検査

    遺伝子検査にはいくつか種類があります。医療機関で行われる体細胞遺伝子検査は、がん細胞で起きている遺伝子変異を調べる検査です。分子標的治療薬の適応を決めるために行われます。また生殖細胞系列遺伝子検査では、がんの発症リスクに関わる遺伝子変異をもっているかどうか調べたり、分子標的治療薬の適応判定のために用いられます。消費者に医療機関を介さず直接販売するいわゆるDTC遺伝子検査は、病気のなりやすさや体質などの健康や、個人の能力、性格に関する傾向を知り生活に活かす目的で用いられます。このほか親子鑑定や出生前診断(羊水検査)などもあります。

  • 遺伝子多型

    わたしたちの姿形が千差万別であるように、30億塩基対からなる遺伝暗号も個人間で比較するとかなり多くの部分で異なっています。この遺伝暗号の違いを遺伝子多型と呼んでいますが、遺伝子多型にも置換、挿入・欠失、繰り返し配列の繰り返し回数の違い、コピー数の違いなど、いくつかのタイプがあります。

  • 遺伝子治療

    遺伝子の機能を変化させる治療で、多くの場合、特定の遺伝性疾患があって正常な遺伝子をもたない人の細胞に、正常な遺伝子を挿入する治療を指します。

  • 遺伝子発現

    遺伝子が働いてタンパク質がつくられること。遺伝子が働くとそのDNA配列が転写(コピー)されてメッセンジャーRNA(mRNA)がつくられます。そしてmRNAを基にtRNAがアミノ酸を運びリボソームRNAなどと連携してタンパク質がつくられます。タンパク質はアミノ酸がつながってできているものですが、タンパク質は構造タンパク、酵素、受容体等、様々な種類があります。

  • ウラシル

    RNA(リボ核酸)を構成している4種類の主な塩基のうちのひとつ。ピリミジン塩基。

  • AMP

    アデノシン一リン酸。ヌクレオチドの一種で、リボ核酸(RNA)の構成成分。アデニル酸ともよばれます。ATPやADPの分解によって生成し、筋肉中に比較的多量に存在しています。

  • ATP

    アデノシン三リン酸。アデニン、リボース(糖)、3つのリン酸が結合した物質。食事で摂取した糖質、脂質、タンパク質は消化吸収され、その分子は解糖、クエン酸回路、電子伝達系という代謝経路でアデノシン三リン酸(ATP)を産生します。ATPはリン酸が3つあり、1つのリン酸を放出したときにエネルギーが発生します。ATPはあらゆる生物において使われていることから「生体のエネルギー通貨」ともいわれています。

  • ADP

    アデノシン二リン酸。ATPから1分子リン酸がはずれたもの。体内で利用されるエネルギーはATPからリン酸がはずれる際に放出されます。ADPは再びATPを合成するために再利用されます。

  • AGEs

    Advanced Glycation End Productsの略語。糖化によって変性したタンパク質で終末糖化産物と訳されます。加齢に伴って蓄積され、AGE化したタンパク質は本来の機能を失うだけでなく活性酸素を増やす元となります。

  • エピジェネティクス

    環境などの後天的な要因によってヒストン修飾やDNAがメチル化されることで、DNAの配列には変化を起こさないで遺伝子の働きをコントロールする生命プログラム。

  • 塩基

    糖(リボースまたはデオキシリボース)、リン酸と共に、DNAやRNAの構成単位となるヌクレオチドを構成する物質。DNAではアデニン(A)とグアニン(G)の2種類のプリン塩基とチミン(T)とシトシン(C)の2種類のピリミジン塩基、RNAではチミン(T)の代わりにウラシル(U)が存在しています。DNAの塩基配列が生命の設計図の役割を果たしています。

  • 炎症

    生体の局所に傷などの諸種刺激が加わって起こる病変で、発赤・はれ・発熱などが起こること。生体防御反応の一種。

  • オーダーメイド医療

    患者一人一人の体質などに合わせた治療を行う医療。患者ごとに遺伝子やタンパク質を調べて、体質に合った効果の高い治療法の選択や、薬の副作用を抑えることなどが期待できるとされています。

  • オートファジー

    細胞が持つタンパク質を分解する仕組みのひとつ。異常なタンパク質の蓄積を防いだり、分解したタンパク質を再利用したりしています。

か行

  • 解糖系

    糖(グリコーゲン)からピルビン酸を経て乳酸が生成される代謝経路で、エネルギー(ATP)も作り出します。

  • 海馬

    大脳辺縁系の一部。記憶や学習能力に関わる脳の器官です。

  • 核酸

    生物にとって最も重要な基本物質。核酸にはDNA(デオキシリボ核酸)とRNA(リボ核酸)があります。塩基(プリン塩基、及びピリミジン塩基)と糖(デオキシリボース、またはリボース)とリン酸からなる高分子物質で、スイスの生化学者ミーシャーが患者の包帯から膿を集め、白血球の中に含まれる高分子物質を細胞核の中から取り出したのは1869年のこと。その後、サケの白子、ビール酵母、動物の胸腺、その他多くの生物材料からも同様の物質が発見され、核から発見された酸性物質ということから、1889年に核酸と名付けられています。

  • 核酸医薬

    DNAやRNAの構成成分である核酸(オリゴヌクレオチド)からなる医薬品。特定の塩基配列やタンパク質を認識して遺伝子発現を抑制したりタンパク質の機能を阻害することで効果を発揮します。

  • 核タンパク質

    構造的に核酸と結合しているタンパク質。プロタミンやヒストンなどがあります。

  • 獲得免疫

    生まれてからの経験を通じて獲得した免疫。自然免疫で対応しきれない異物を識別、対処する免疫。一度体内に侵入した異物を記憶し、それに対して抵抗性を持つ仕組み。体液性免疫と細胞性免疫に大別されます。

  • 過酸化脂質

    コレステロールや中性脂肪などの脂質が、活性酸素 によって酸化されたものの総称です。

  • 過酸化水素

    活性酸素の一種。殺菌剤(オキシフル)としても利用されています。

  • カタラーゼ

    抗酸化酵素の一種。過酸化水素を水と水素に分解します。

  • 活性酸素

    エネルギー産生、異物攻撃、不要な細胞の処理、細胞情報伝達などに際して発生する酸化力の高い酸素。一重項酸素、スーパーオキシドアニオンラジカル、ヒドロキシラジカル、過酸化水素などがあります。本来は必要なものですが、過剰になると体内の脂質やタンパク質、DNA等に損傷を与え、老化を早めたり生活習慣病の発症要因となります。

  • 顆粒球

    免疫に働く白血球の一種で骨髄系幹細胞から分化した細胞。好中球、好塩基球、好酸球などがあります。

  • キラーT細胞

    リンパ球の一種。がん細胞やウイルスに感染した細胞を攻撃する細胞性免疫の主役。ヘルパーT細胞の指令で活動を開始し分化、増殖します。

  • グアニン

    生体内に存在する塩基性の化学物質でプリン塩基のひとつ。核酸の構成成分。

  • グリア細胞

    脳の実質細胞のひとつ。神経細胞の足場となる支持細胞としての働きや、神経細胞の働きを助ける補助細胞の役割を担う。最近では記憶学習など脳の高次機能が神経細胞とグリア細胞の相互作用を介して制御、調節されていることも示唆されています。

  • グルタチオンペルオキシダーゼ

    抗酸化酵素の一種。細胞膜に蓄積した過酸化脂質を水とアルコールに分解したり、過酸化水素を水に還元したりします。また、ビタミンB2を補酵素としてヒドロキシラジカルを消去します。

  • ゲノム

    gene(遺伝子)と集合をあらわす"-ome"を組み合わせた言葉で、生物のもつ遺伝子(遺伝情報)の全体を指す言葉。人間のゲノムはヒトゲノム、稲のゲノムはイネゲノム。

  • ゲノム編集

    標的とするゲノム配列を自在に変える技術。ゲノム編集技術の発達により、遺伝子を容易に改変することができるようになり、食品の品種改良などに活用されています。また疾患の治療にも役立つとして医療への応用が期待されています。

  • 抗原

    生体に免疫反応を引き起こす物質の総称。ウイルスや細菌、花粉など。

  • 抗酸化システム(抗酸化機能)

    生体防御機能のひとつ。スーパーオキシドディスムターゼ、グルタチオンペルオキシターゼ、カタラーゼといった抗酸化酵素や抗酸化栄養素によって、有害な活性酸素群による生体の酸化損傷を抑える機能。

  • 恒常性維持機能

    外部環境の変化にかかわらず、生体内部の環境を一定に保とうとする機能。自律神経、ホルモン、免疫などが協力しながら働くと考えられています。

  • 酵素

    生体内の化学反応を促進したり、遅くしたりして調整する働きを持つタンパク質。物質を消化する段階から吸収、輸送、代謝、排泄に至るまでのあらゆる過程に関与しています。

  • 抗体

    抗原を排除するために作られるタンパク質の総称。

  • 好中球

    白血球の約45~75%を占める顆粒球の一種。強い貪食能力を持ち、細菌や真菌感染から体を守っています。

  • コドン

    DNA上でアミノ酸を指定する3つで1組の塩基配列。タンパク質はアミノ酸が化学的に結合することによってつくられています。タンパク質を構成するアミノ酸は20種類。アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(t)の4種類しかない塩基が、多様なアミノ酸を指定するためには、GAA、CUGなど、塩基を3つ組み合わせて1組とし、それを1つの情報とすることで可能にしています。コドンは最大で64通りの組み合わせが可能ですが、コドンによって指定されるアミノ酸は20種類です。

さ行

  • 再生医療

    痛んでしまった臓器や組織をもとに戻す治療。この治療に用いる細胞や臓器をつくる技術としてiPS細胞の応用が期待されています。

  • サイトカイン

    情報伝達物質の一種。細胞間相互作用を担うタンパク質(あるいは糖タンパク質)。多くの種類があり細胞の分化・増殖、種々の機能の活性や抑制などに働きます。

  • 細胞性免疫

    抗体が関与しないT細胞による防衛が中心の免疫応答。異物に侵略された細胞や異常細胞そのものをキラーT細胞やマクロファージなどが破壊する。そのほかに樹状細胞やヘルパーT細胞などが働きます。

  • サプレッサーT細胞

    白血球(リンパ球)の一種。免疫応答の抑制や終了させるサイトカインを分泌します。

  • サルベージ合成

    食事から摂取した核酸や、体内で分解された核酸成分を各細胞で核酸に再合成する経路。

  • 酸化

    物質が酸素と結合する、または水素、もしくは電子が放出されること。金属の錆びや、食品の変色などは酸化によって起こります。

  • 酸化ストレス

    生体内で生成される活性酸素群の酸化損傷力と、生体内の抗酸化システムの抗酸化力との差。酸化損傷力が抗酸化力より大きくなると酸化ストレスが高くなります。

  • システインペプチド

    アミノ酸が3つ連なった化合物(ペプチド)で、グルタミン酸、システイン、グリシンで構成されます。グルタチオンとも呼ばれます。体内では、抗酸化物質として活性酸素などの酸化ストレスから細胞を防御する重要な役割を持ちます。また、肝臓に多く含まれ、そこで体内の異物を解毒する際にも必要です。

  • 自然免疫

    生まれた時から生体に備わっている免疫で、体内に侵入した異物に対する最初の防衛システム。マクロファージ、NK細胞、好中球などが働きます。

  • シトシン

    核酸を構成する5種類の主な塩基のうちのひとつで、ピリミジン塩基。

  • シナプス

    神経細胞(ニューロン)同士の接触部。隣接する神経細胞の間には隙間があり、電気信号を伝えることができないため、神経伝達物質を分泌して次のニューロンへ電気信号を伝えています。シナプスでつくられる神経伝達物質は100種類以上あり、運動神経と副交感神経末端からは主にアセチルコリンが、交感神経末端からは主にノルアドレナリンが分泌されます。

  • 修復システム

    活性酸素などによって傷つけられたタンパク質やDNAを修復する仕組み。アミノ酸修復酵素やヌクレオチド修復酵素などが修復を試みます。

  • 樹状細胞

    白血球(単球)の一種。抗原を貪食するとともに、自然免疫系からシグナルを受け取ると、リンパ節に移動しヘルパーT細胞に情報を提示します。

  • 神経幹細胞

    脳の海馬や脳室に存在する増殖性の細胞。神経細胞などに分化することができます。

  • 神経細胞(ニューロン)

    脳の実質細胞の一つ。互いにつながりあうことで情報伝達が行われます。核を持つ細胞体と、そこから出る短い樹状突起、長い軸索(神経線維)で構成されています。

  • 神経伝達物質

    神経細胞同士がつながるシナプスで情報を伝達するために放出される物質。アセチルコリン、ノルアドレナリン、グルタミン酸、セロトニンなどが知られています。

  • スーパーオキシドアニオンラジカル

    活性酸素の一種。体内で最も多く発生し、他の活性酸素に比べると反応性は低いがヒドロキシラジカルなど、毒性の強い活性酸素に変化する可能性が高い。

  • スーパーオキシドディスムターゼ

    抗酸化酵素の一種。活性酸素を中和して酸素と過酸化水素に分解する働きを持つ。スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)の合成には亜鉛、銅、マンガンなどが必要です。

  • SNP

    個人間の遺伝情報のわずかな違いのことで、1つの塩基が他の塩基に置き換わっているものを一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism)といい、SNP(スニップ)と呼びます。ヒトゲノム中には約1千万ヵ所のSNPがあると考えられています。

  • 制御性T細胞(Treg細胞)

    T細胞の一種。正常な細胞が攻撃されないよう、ヘルパーT細胞やキラーT細胞の働きを抑制し、アレルギー反応や炎症反応などを抑える働きを持つと考えられています。

  • 生体防御システム

    ウイルスなどの外敵や活性酸素による損傷などに対抗し、生体を正常な状態に保つための防御システム。主に免疫システム、抗酸化(抗炎症)システム、分解系、修復システムが連携して働きます。

  • 染色体

    DNAがヒストンという塩基性タンパク質に巻き付いてできたクロマチン繊維がさらに折りたたまれてできた構造物。細胞の核内にあり、細胞分裂の際に棒状の構造体として観察され、塩基性色素に濃く染まるところから染色体の名付けられました。ヒトの染色体は、22種類2本ずつからなる常染色体と1組の性染色体(XとY染色体)の23対、計46本からなっています。ちなみに23番染色体は男性はXY、女性はXXの組み合わせです。染色体には、細胞分裂の際にその分裂に重要な動原体や、末端を保護するテロメア配列などの特殊な構造もあります。

  • セントラルドグマ

    DNAがもっている遺伝情報は、DNAを鋳型として合成されるメッセンジャーRNA(mRNA)に転写され、最終的にタンパク質のアミノ酸配列として現れます。遺伝情報はDNA→mRNA→タンパク質という方向へ流れるという概念を、分子生物学のセントラルドグマ(中心原理)といいます。

た行

  • 体液性免疫

    B細胞で産生された抗体が中心の免疫応答。体液性免疫において抗原と抗体は特異的に結合します。この反応を抗原抗体反応といいます。抗原抗体反応は、抗体が抗原に付着することで起こる反応で、抗原を無毒化しマクロファージの貪食や補体の働きを活性化します。抗原抗体反応はB細胞が産生する様々な抗体の中にその抗原に対して、鍵と鍵穴のように抗原がぴったりと結合することによって起こります。

  • 代謝

    吸収された栄養素を、身体に必要な物質に分解(異化作用)したり、合成・加工(同化作用)したりする化学反応。代謝により生成された産物を代謝物という。

  • 体内動態

    体内への吸収、分布、代謝、排せつの過程。体内での物質の挙動のこと。

  • タンパク質

    タンパク質とはアミノ酸が多数結合した高分子化合物で、筋肉や臓器など体を構成する要素として非常に重要なもの。アミノ酸の組み合わせや種類、量などの違いによって形状や働きが異なり、酵素やホルモン、免疫物質など、さまざまな機能を担っています。

  • チミン

    DNA(デオキシリボ核酸)を構成するピリミジン塩基の一種。

  • 腸管免疫

    腸管には免疫細胞が多く集まっています。腸管免疫系はパイエル板などのリンパ組織、粘膜上皮細胞、上皮の内側にある免疫担当細胞から構成されています。これらの細胞が協力して働くことにより免疫全体が活性化され、さまざまな病原体の攻撃から生体を守るために働いています。

  • DNA

    DNAは「デオキシリボ核酸 deoxyribonucleic acid」の略称で、生命の設計図の役割を果たす「遺伝子」の正体はこのDNAです。私たちの身体は約37兆個の細胞でできており、ひとつひとつの細胞の核にはDNAが存在しています。DNAはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という4種類の塩基に糖、リン酸が結合したヌクレオチドという物質が、様々な配列で長く連なった構造をしており、ヒトのDNAは約30億個の塩基で1セットを構成しています。細胞に含まれるDNAの1セットを「ゲノム」といいます。DNAは2本鎖で、塩基のAとT、CとGが水素結合して対をつくり、はしごがねじれたような二重らせん構造をしています。

  • T細胞

    白血球(リンパ球)の一種。病原体に感染した細胞を攻撃する働きをもつ。

  • Th1細胞

    ヘルパーT細胞の一種。T helper 1 cell。キラーT細胞、マクロファージを活性化するサイトカインを分泌します。

  • Th2細胞

    ヘルパーT細胞の一種。T helper 2 cell。抗体産生を促進するサイトカインを分泌します。

  • TCA回路

    トリカルボン酸(tricarboxlic acid) 回路の略称。生命に必須のエネルギー物質「ATP」(アデノシン三リン酸)をもっとも効率よく作り出す回路。1940年にこれを発見したイギリスの生化学者H-Aクレブスの名をとって「クレブス回路」や、クエン酸の合成からこの回路が始まることから「クエン酸回路」ともよばれます。

  • デノボ合成

    アミノ酸、アンモニア、二酸化炭素などを原料として、肝臓(一部は腎臓)で核酸を合成する経路。最短でも10段階以上の酵素反応を用いて合成され、大きなエネルギーが必要です。

  • 転写

    DNA の塩基配列が mRNA(メッセンジャー RNA)の塩基配列に写し取られること。

  • 糖化

    糖がタンパク質や脂質との間で起こす化学反応。体内の酸化ストレスを高め老化を進行させる要因として近年注目されています。

  • トランスファーRNA(tRNA)

    たんぱく質合成の際に、アミノ酸を結合してたんぱく質を合成するリボソームへアミノ酸を運ぶ役割を果たすRNA。

な行

  • ナチュラルキラー細胞

    白血球(リンパ球)の一種。自然免疫の主要因子として常に体内をパトロールし、異常細胞やウイルス感染細胞を殺傷、またはアポトーシスに導きます。

  • ニュートリゲノミクス

    食品や栄養素などが遺伝子発現や体全体に与える影響を研究する学問、手法。

  • ヌクレオシド

    ヌクレオチドからリン酸がはずれたもの。ヌクレオチド参照。

  • ヌクレオチド

    DNAやRNAの構成成分。ヌクレオチドは塩基に五炭糖とリン酸が結合したもの。ヌクレオチドからリン酸がはずれたものをヌクレオシドといいます。塩基はアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)(RNAの場合、チミンはウラシル(U)となる)の5種類で、五炭糖がデオキシリボースのものをデオキシリボヌクレオチド、リボースのものをリボヌクレオチドといいます。これらはそれぞれ重合して、デオキシリボヌクレオチドはDNAを、リボヌクレオチドはRNAを形成します。

  • ネクローシス

    外的な要因によって引き起こされる細胞死のこと。壊死。

  • ノンコーディングRNA

    非翻訳RNA。タンパク質の一次構造に翻訳される情報を持つメッセンジャーRNA(mRNA)以外のRNAの総称。ノンコーディングRNAにはタンパク質の合成に関わるリボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)などがあり、その他、マイクロRNAなどさまざまな生命現象に関与するノンコーディングRNAが発見されています。

は行

  • 8-OHdG

    正式名は8・ハイドロキシ-2’-デオキシグアノシン。DNAの構成因子デオキシグアノシン(dG)が活性酸素などのフリーラジカルにより酸化されて生じる酸化物。生体内では修復酵素等によって正常な塩基と入れ替わりに異物として切り出され、代謝されずに血液を経て尿中に排泄される。活性酸素による「酸化ストレス」は、老化を早めたり、生活習慣病を引き起こす大きな原因であると考えられています。この酸化ストレスレベルを知り最小限に抑えることが生活習慣病の予防や老化の進行を遅らせる重要なカギとなります。

  • 白血球

    血液中の血液細胞の一種であり、細菌、ウイルス、真菌(カビ)といった外敵やがんから身体を守る働きをしています。顆粒球、単球(マクロファージ)、リンパ球などの種類があります。

  • B細胞

    白血球(リンパ球)の一種。抗体と呼ばれるタンパク質を作って分泌します。

  • ヒストン

    真核生物のクロマチン(染色体)を構成する核タンパク質。全長2mともいわれるDNAはこのヒストンに巻き付いて折りたたまれて細胞の核内に収納されています。

  • ヒドロキシラジカル

    活性酸素の一種。最も強い酸化力をもつ活性酸素。

  • ピリミジン塩基

    塩基のうちチミン(T)、シトシン(C)をピリミジン塩基という。六員環が1つだけの構造をしています。

  • フリーラジカル

    不対電子を抱える反応性の非常に高い分子。物質を酸化する力が強い分子。体内で発生するフリーラジカルには、スーパーオキシドアニオンラジカル、ヒドロキシラジカルなどがあります。

  • プリン塩基

    塩基のうちアデニン(A)、グアニン(G)をプリン塩基という。六員環と五員環の2つからなり、一般的にはプリン体といわれています。プリン塩基をもつヌクレオシドのアデノシンやグアノシンはキサンチンオキシターゼ(XO)やキサンチンデヒドロゲナーゼ(XD)という酵素によって尿酸にまで分解されます。

  • プロタミン

    脊椎動物の精子核の中でDNAが巻きついている精子核特有のタンパク質でDNAを保護する役割を担っています。細胞核内では、DNAはタンパク質のヒストンに巻きつき折りたたまれてクロマチン構造をとり、染色体を形成し収納されています。しかし、精子核の中では、精子がつくられていく過程で、ヒストンはプロタミンに置き換えられていきます。

  • 分解系

    活性酸素などによって傷つけられたタンパク質や細胞小器官、細胞などを分解してリサイクルする仕組み。分解系の仕組みはさらにユビキチン-プロテアソーム系、オートファージー、アポトーシスという仕組みに大別されます。

  • 分子栄養学

    食品や栄養素が体内でどのような影響を及ぼすのか、その機能性やメカニズムを分子レベルで明らかにする手法、学問。マルチオミクス解析(トランスクリプトミクス、プロテオミクス、メタボロミクスなどの組み合わせ)、ゲノムワイド相関解析、エピゲノム解析などを用いて食品や栄養素の機能性などを明らかにします。

  • ペプチド

    2個以上のアミノ酸がペプチド結合によって縮合してできた化合物の総称。アミノ酸の数によって、2個ならジペプチド、3個ならトリペプチド、10個程度の少数ならオリゴペプチド、多数ならポリペプチドといいます。

  • ヘルパーT細胞

    獲得免疫における司令塔の役割を果たすT細胞の一種。B細胞の抗体産生を促進するサイトカインを分泌するTh2や、キラーT細胞やマクロファージを活性化するサイトカインを分泌するTh1などの種類があり、これらのバランスの崩れがアレルギーや自己免疫疾患に関与していると考えられています。

  • ポリアミン

    ヒストンやプロタミンといったDNAを構成する核タンパク質に結合して、その立体構造を保つ働きをする化合物。アミノ酸の一種であるアルギニンから合成される。ヒトの体内には20種類以上のポリアミンが存在しますが、代表的なものはプトレシン、スペルミジン、スペルミンの3種類。細胞増殖の際に不可欠なことから細胞増殖必須因子と呼ばれます。

  • 翻訳

    DNAからコピー(転写)されたメッセンジャーRNA(mRNA) の塩基配列に基づいて、トランスファーRNAやリボソームなどによってタンパク質が合成されること。

ま行

  • マクロファージ

    白血球(単球)の一種。細菌などの異物を貪食して細胞内に取り込み抗原提示を行います。大食細胞とも呼ばれます。

  • ミトコンドリア

    ほとんどすべての真核生物の細胞に含まれる細胞の小器官。酸素を取り入れて、二酸化炭素を排出する呼吸機能を司り、糖質、脂質、タンパク質を代謝してエネルギー物質「ATP」(アデノシン三リン酸)の産生を行っています。

  • メッセンジャーRNA(mRNA)

    DNAのタンパク質一次構造の情報(塩基配列)を転写して、タンパク質を合成するアミノ酸の塩基配列を規定するRNA。

  • メモリーT細胞

    病原体に感染した細胞などを攻撃したT細胞は仕事を終えると減少しますが、再度同様の病原体が侵入した際に素早く反応できるように抗原を記憶した細胞が残ります。この細胞をメモリーT細胞といいます。

  • 免疫

    生体防御機能のひとつ。ウィルスや病原菌といった有害な侵入物から体を防御するシステム。体内に元から存在する「自己」と、そうではない「非自己」を判別し、有害な非自己だけを排除する仕組み。

ら行

  • リボゾーム

    リボソームRNAとタンパク質から構成される複合体で、タンパク質を合成する工場としての役割を担っています。リボソームではメッセンジャーRNA(mRNA)の情報をもとにトランスファーRNA(tRNA)が運んでくるアミノ酸をつなげてタンパク質をつくります。

  • リボゾームRNA(rRNA)

    タンパク質とともにリボソームという複合体を形成するRNA。リボソームはタンパク質合成の場として働きます。

  • リンパ球

    白血球の一種。リンパ球系幹細胞から分化した細胞でT細胞、B細胞、NK細胞などがあります。

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