次世代核酸ラボFD 統括リーダー 須藤慶太、 研究員 藤田美華
核酸栄養の機能性研究や核酸原料の研究開発を担い、世界の核酸栄養研究をリードする次世代核酸ラボFDの研究員たちはどのような思いを胸に日々、研究開発に取り組んでいるのか、その素顔に迫ります。
核酸栄養研究に携わる前は、どのような研究をされていたのですか?
須藤:私は植物生理学及び生化学の研究をしていました。例えばイネ種子の発芽のメカニズムについての研究や、コムギはなぜ寒さに強いのかといった研究をしていました。そのほか、米国での研究員時には植物のエピジェネティクスやsmall RNAに関する研究や、九州大学の研究員時には、DNAi(DNA干渉)の研究を行い、その後にライフ・サイエンス研究所で核酸に出会いました。ライフ・サイエンス研究所では核酸以外にもお米などの研究もしましたが、その中でも核酸栄養というテーマは大変興味深いものでした。なぜなら大学の研究者だった当時は我々が扱っていた遺伝子の本体であるDNA(核酸)が栄養としての視点があるということが非常に新鮮だったからです。また、元々農作物を研究していましたので、食べたときにどのように働きかけるのかといった食品の機能性研究は非常に興味がありました。そういう意味では自分がやりたいと思う研究テーマに取り組めているのかなと思います。
藤田:私は元々研究者ではなく、臨床検査技師として総合病院に勤務していました。業務では微生物検査に携わっていたのですが、その中で、臨床材料から検出された薬剤多剤耐性菌に興味を持ち、独自に調べたり、国立衛生研究所の先生との共同研究や学会発表を経験したことをきっかけに、研究分野への関心が大きくなりました。本格的に研究の道に進みたくて理系の大学に入り直しました。第二の学生時代は学業に励みつつ、衛生研究所での感染症調査研究にも携わらせていただきました。卒業後、研究職の仕事を探していた時に、ライフ・サイエンス研究所での求人を知り応募しました。運よく入社させていただいたことが核酸研究との出会いになりました。私は機能性を評価するような研究の経験がほとんどなかったので、ライフ・サイエンス研究所時代に、須藤さんから機能性研究の基礎を一から叩き込まれました(笑)。ですので、須藤さんは私にとって研究の師匠といったところです。
須藤:藤田さんは異分野から研究分野に来て、その場その場でいろいろなことを覚えてきたというところでは、素晴らしい対応力の持ち主だと思います。
次世代核酸ラボFDの主な研究内容について教えてください。
須藤:次世代核酸ラボFDでは核酸の機能性を調べる研究や、食品、化粧品に用いる核酸原料の開発のための研究を行っています。核酸原料とは核酸を含むサプリメント原料のことで、主にサケ白子と酵母からそれぞれの原料の開発を行っています。核酸原料の開発では多くの試作品の中から、迅速かつ的確に最良の原料を選抜するための方法を確立することが重要です。
藤田:現在、食品用途の核酸原料の開発で主な選抜の指標としているのは「抗酸化機能」です。抗酸化機能は全身的な健康維持に重要な機能です、これまでにも核酸を食べることによって抗酸化に関する遺伝子の発現に影響を与えることが報告されています。さらに抗酸化は、様々な疾患や、症候群とも関連があり、また、生体の老化にも深く関連しています。また、その抗酸化機能は上述した抗酸化酵素などだけではなく、様々な遺伝子が関わっていることが考えられています。そこで私たちは酵母を用いて栄養としての核酸の抗酸化機能を評価し、核酸原料を選抜する方法を確立しました。
須藤:酵母は我々と同じ真核生物でありながら取り扱いやすい単細胞生物という、生体と細胞の両面から観察できる便利なモデル生物で、迅速かつ的確に最良の原料を選抜することができます。また、次世代核酸ラボFDでは化粧品原料の開発にも注力しています。皮膚に塗布することを想定し、表皮・真皮の皮膚細胞にどのような形状の核酸が最適なのかといったことを調べています。
藤田:化粧品原料の開発について、具体的にはミトコンドリアにおけるATP(アデノシン三リン酸)産生への影響を指標としています。ATPは生物共通のエネルギーで、ATP産生が高まると細胞の代謝が活性し肌に良い影響があると考えられています。化粧品原料も食品原料と同様に抗酸化に関する評価も行っています。皆様の健康や美容に貢献できるよう研究員一丸となって毎日取り組んでいます。
お二人はどのような業務を担当されているのですか?
須藤:実際の研究も行いますが、研究の統括リーダーとして、研究、開発全体のマネジメント、研究計画の立案など、次世代核酸ラボFDの業務だけでも多岐にわたりますが、そのほかにも原料製造管理や商品開発、営業、マーケティングといったさまざまな部署と連携して、講演などを通じて研究成果をお伝えしたり、商品を通じて効率的に皆さまの健康に貢献するための仕事をしています。さらに、学会等に参加し、研究者への核酸栄養の普及にも努めています。藤田さんは実際に手を動かして研究を進めてくれていますよね。
藤田:そうですね。実際に手を動かして研究を進めています。酵母に核酸を食べさせた場合に、寿命や生存率などにどのような違いが出るのかといったところを調べています。さらに現在、食品用核酸原料の評価方法として、ショウジョウバエを用いて原料を選抜する方法の確立に向けて研究を進めています。酵母よりもさらに高度なショウジョウバエを用いることで、酵母では出来なかった評価が出来るようになります。例えば、運動機能や脳機能など行動に関する評価など、より高度な評価を行うことが可能になります。研究以外にも大学との共同研究でも核酸研究を進めていますので、共同研究の先生方とのディスカッションや、研究を進めるうえでの連絡、調整といったことも行っています。
須藤:藤田さんはモデル生物によるアプローチという部分が大きいかな。我々のほかにも、核酸原料の開発や品質保持に関する業務を担当する研究員が次世代核酸ラボFDにはいます。皆、毎日頑張ってくれています。
核酸栄養研究の面白み、醍醐味、どんな風に感じていますか?
須藤:核酸栄養の機能性に関する研究報告は1980年代あたりから結構あります。ただしRNAの研究がほとんどで、かつ機能性のメカニズムについてはほとんど報告されていません。1980年代と比較すると驚異的に分子生物学や分子遺伝学、分子栄養学といった分子レベルの研究知識及び技術のレベルが上がっています。したがって、そういった学問的な時代背景もありますが、メカニズムのところがほとんど報告されていませんので、我々が現代的な研究手法でひとつずつ解明してゆくというところが一番の醍醐味ですね。DNAに関する研究報告はRNAと比べるととても数が少ないですし、DNAの機能性についてもメカニズムから解き明かしていきたいです。
藤田:研究を進める中で、ある機能性が見出せた場合は、なぜこの機能性が発揮されるのか、そのメカニズムを推測します。こういう経路に働きかけて、この経路が動くからこういう現象が起きているのではないかというように想像するのですけど、実験してみると全然思い通りじゃないことの方が多すぎて、そこが逆に想像できなくて面白い。発見や驚きがあってすごくやりがいがあるなって思います。
須藤:あとはこれだけ体感がしっかりとある食品素材はなかなかないと思います。そしてもうひとつは、医食同源とか薬食同源と言うように、研究を突き詰めていくと核酸栄養は核酸医薬に繋がっていくのかなという感覚を覚えます。まだまだいろいろな可能性を秘めている核酸は、企業人としても研究者としても大変興味深い研究対象だと思います。
藤田:核酸研究に触れて思うことは、今までそれこそ教科書的には核酸は体内で合成されるので、積極的に食べる必要はないと言われていたのですが、非必須アミノ酸のように、栄養としての核酸の意義が少しずつ紐解かれてきており、興味深いことだらけだということです。もっと核酸のことを深く知るために、これからも核酸研究に携わっていきたいと思っています。