生命活動を支えるエネルギーに注目
人生100年時代をいきいきと過ごすためには、筋肉量の維持とともに、エネルギー産生を高めることが大切です。エネルギーは筋肉の収縮などの体を動かす活動だけではなく、体温を保つこと、脳の神経細胞の活動、さらには体内でのタンパク質合成など、生命活動のあらゆる場面で利用されています。
エネルギー源となる栄養素
エネルギー源となる主な栄養素は炭水化物(糖質)、脂質、タンパク質(3大栄養素)です。その中で最も利用されるのは糖質です。極端な糖質制限をおこなうと、体内では必要なエネルギーを確保するために、筋肉(タンパク質)を分解して得たアミノ酸を糖質に変換してエネルギー源にする「糖新生」が起こり、筋肉量が減少してしまいます。また、エネルギー不足は倦怠感や集中力低下などを引き起こす原因にもなります。エネルギー不足にならないように3大栄養素をバランスよく摂ることをこころがけましょう。
体内での栄養素の主な働き
生物共通のエネルギー物質「ATP」
ところで、糖質などの栄養素は、体内に取り入れたままの状態でエネルギーとして使われるわけではありません。主に細胞内の小器官「ミトコンドリア」で、生命活動に利用できるエネルギー分子「ATP(アデノシン三リン酸)」に変換されます。
ATPは、エネルギーを蓄えたり放出したりする「カプセル」のようなものです。地球上のすべての生物に共通して使われるエネルギー物質であるため、「生命のエネルギー通貨」と呼ばれています。
ヒトの細胞とミトコンドリア
ATPは核酸成分の一種
「ATP」は、核酸(RNA)成分のひとつであるヌクレオチド「AMP」にリン酸が2つ結合したもので、ATPも核酸成分の一種です。リン酸の結合は「高エネルギーリン酸結合」と呼ばれ、ATPからリン酸が外れる時にエネルギーが放出されます。逆に、リン酸が結合する際にエネルギーが貯蔵されます。
ATPは核酸成分(ヌクレオチド)のひとつ
エネルギー物質であり、ヒトの身体をつくる核酸成分
このように、核酸成分は身体に必要なタンパク質をつくるばかりではなく、生命活動のエネルギー物質としても働きます。生命にとって核酸は普遍的に欠かすことのできない根源物質といえるでしょう。